『無鉄砲inN.Y』後編 [ 旅 ]その日の夕方「ディナークルーズ」を予約していた私たちは、とりあえずホテルに戻った。本当は、もうフラフラなのだが、 「予約している」ため、意地でも「ディナーでクルーズ」しなければならない。 あたふたと、あわただしく部屋で、おのおの準備をしているその時である。 私は、あることに、驚愕した。 それは、「黒い靴を日本に忘れてきたこと。」だった。 「ディナークルーズ」用に、もって来た服は、 モノトーンの上下だったため、 出発に際してこれだけは、と準備していたのだが、 あろうことか、私はその靴を忘れてきちゃったのである。 「あううっ・・。」と、声にならない叫びだ。 私は、がっくり肩を落とした。 同室の大変英語の流暢な友人に、「なんとかヒルトンの外に、買い物について来てくれ」と、 これ以上ない笑顔で頼んだら、あっさり断られた。 「女の友情」は、かくもはかない。 他の2人も、ウキウキと準備に余念がない様子だ。 私自身、『黒い靴』のことなど、ほんの2~3時間忘れていればいいのに、 どうしても、あきらめきれないでいた。 その時の私には、「モノトーンの服」に、「明るいブラウンの靴」の組み合わせが、 どうしても、チグハグしたもののように様に思えてならなかったからだ。 その時、追い詰められた私のとった行動は、驚くべきものだった。 『さまよって、東京。』にも書いたとおり、 私は、「ものすご~~い方向音痴」だ。 その『方向音痴』&『英語かたこと』の私が、 初めて来たN.Yのど真ん中で、 なんと『決死の1人ショッピング』を決行したのである!! 本当に絵に描いたような無鉄砲ぶりだ。 下手すれば、日本に戻って来れない可能性もある。 時間もないので、この任務に失敗すれば、「ディナークルーズ」さえも、見事にパアだ。 頭のなかには、『ミッション:インポッシブル』のテーマが、大音響で鳴り響いた。 私は、薄情な(ごめんね。)友人達を部屋に残し、 大急ぎで、下におりた。 ホテルをでると、近くに、さっきなにげなく通り過ぎた、 『靴屋』があるはずだ、 なんとしてもそこにたどり着かなければ!と、 辺りを見回して、状況確認をした。 「よしっ!」と、自分に気合をいれて、歩き出す。 まさに、『無鉄砲inN.Y』だ!! もう、ココまできたら、「野生の勘(?)」をたよるしかない、 人間追い詰められると、なんとかなるものである。 私が目指したその店は、思った以上に離れていたものの、 ものすごーく目立つ場所にあったため、 なんとかたどり着くことが出来た。 お店に入るとイタリア系の陽気な3人組に迎えられた。 突然、息を切らしながらあらわれた、『日本人観光客』に、 その陽気な3人組は、とっても親切だった。 ニコニコして、まるで、歌でも歌いだしそうな雰囲気だ。 私は、自分の知っている全ての英単語を駆使し、 自分の欲しいデザインを必死で伝えた。 なにせ、時間が迫っているのだ。 ここでしくじるわけにはいかない。 またたくまに、黒いパンプスが目の前にズラリとならべられ、スグに気に入った靴を選び出すことができた。 決まった靴を見て、陽気な3人組は、 「ビンゴ!ビンゴ!」となぜか、大喜びで万歳していた。 この間、賞味20分かかっていないと思うのだが、 本当にイイ買い物だった。 私は、その買ったばかりの、黒いパンプスに履き替え大急ぎでホテルに戻った。 なんか、「N.Yのディナークルーズ」よりも、 その3人組みのことのほうが印象に残る夜だった。 今も、フランク シナトラの「Theme From New York New York」を聴くと、 その3人組の笑顔がおぼろげに甦るのだ。 I Love New York !! |